チャーリー・ユーコン川下り その4 〜B24ハイキング〜
a0088116_1344841.jpg

ブッシュプレーンで降り立った、そのギルビン・ストリップというポイントでラフトとカヌーを組み立てると、リーガンはランチを作ってくれた。

アンガスビーフのチーズバーガー。
なかなか豪華。
ごちそうさまでした。
a0088116_1411967.jpg

食事が終わるとリーガンは、
「B24の所まで、ハイキングに行こう。」
と言い出した。
あの上空から見た、飛行機墜落現場の事だ。

イサオさんは、もちろんと目を輝かせている。


飛行機野郎の2人。
元戦闘機パイロットのイサオさんと、大学で戦争の歴史を勉強していたリーガン。
この2人が、あのB24に興味がない訳がない。

今日は最初の予定より40kmも川下に降りたし、スケジュール的にも余裕が出来た。
ブッシュパイロットのロンが、2時間半くらいの簡単なハイキングだと言ってたし、これは行くしかない。


「自分のこの目で、その歴史的なB24を見る事は、僕の人生に置いてとても重要な意味をなす事だ!」
熱く語るリーガン。


そうですか。じゃあ、行かない訳にはいかないね。
バックパックに必要な荷物を詰め込むと、5人は張り切って出発した。
a0088116_4504824.jpg

ロンが言っていたように、川に沿って木の中を通る。
リーガンを先頭に、アラシ、ムサシ、イサオさん、私の順でどんどん歩く。

しかし30分もしないうちに、元来た道を戻る事になる5人。
道が途中で消えたのだ!
木が転がって水たまりだらけの、荒れた土地になっていた。



ロン。
話が違うじゃん!


道ないし。
全然簡単じゃないし。
きっとロンが言ってた情報って、20年以上も前の話だよ。



毒づく私達。

(後日談になるが、旅が終わってロンに聞いてみると、彼が最後にこの山に登ったのは、30年前の話だった。・・・やっぱり。)


しょうがなく、戻る事に。
出発点のキャビンの裏から、トレイルがあったはずだ。
ロンの話は信用出来ない。あそこの道を歩いてみよう。


こうして一同は、ロンが何度も言っていた「大変な道」を進む事になったのだった。
a0088116_350342.jpg

まずは、高い木が立っている道を進む。
かすかに道はあったが、それも途中で消え、道なき道をどんどん行く。
それを抜けると、薮に出た。

すごい数の蚊。
集ってくる蚊で真っ黒になりながら、歩く。



怖いよ。
熊より蚊が恐いよ。

蚊を振り払いながら、歩く歩く。


途中で、面白い物を発見した。
a0088116_5354964.jpg

何だ、この植物は?
緑の中に一カ所だけ、こんな幻想的な風景が。
宮崎駿のアニメに出てきそうだな。
ナウシカで、こんなの見たような気がする。
a0088116_5364774.jpg

鳥の赤ちゃん。
生まれたばかり。

他にも、熊のウンチもたくさん見た。

珍しい物を発見すると、リーガンが子供達に詳しく説明する。
いいね。生きた教育だね。


ツンドラ・スワンプ地帯に入った。
湿地帯だ。
歩きにくい。

スポンジの上を歩いているような、気持ち悪い感触。
よく見ないと、水が溜まっている所もたくさんある。


最初元気だった子供達だが、ムサシから
「すごく疲れた。」
「足が痛い。」
と文句が出るようになった。

すでに歩き始めてから2時間半。
ロンの話では、もう到着している時間だ。
a0088116_5483780.jpg

(写真は、その頃のムサシ。集っているのは蚊。)

「いくら文句言っても、何もいい事は起きない。文句を言えば言う程、周りの人の気持ちを嫌にさせるだけだ。
やるしかないんだから。いい事は何でも、大変な思いをしなくちゃ到達出来ないよ。
前向きな気持ちと態度で、ゴールの事だけを考えて、さぁ行こう!」

リーガンが諭すが、ムサシはそれでも疲れたと口を尖らせる。


「じゃあね。」
リーガンが続ける。
「これから一言も文句を言わずに歩けたら、50パワーポイント!」




でた、パワーポイント。

これは夏休みから始まった制度で、100ポイント溜まると10ドルの好きな玩具が買えるシステムだ。




「50ポイント!?」

途端に、ムサシの表情が変わった。

「分かった。もう文句は言わない。行こう!」
ムサシが明るい顔で立ち上がる。




すごい威力だな、パワーポイント。

実際に、この日から旅が終わるまで、ムサシが文句を言ったり弱音を吐いたりする事は、一切なかった。


ところで、地図も方位磁石も持っていないのに、どうして道が分かるのか。
リーガンの方向感覚はすごい。

前もスノーモービルで真っ白な雪の中で迷った時に、リーガンのだけで、元の道に戻れたんだ。
そんなリーガンを信じて、みんなリーガンの後をついていくだけだ。
a0088116_616532.jpg

どんどん、スワンプ地帯に入る。
もう靴はびしょびしょに濡れて、気持ち悪い。
ハイキングするなんて誰も思ってもいなかったから、みんな普通の運動靴。イサオさんなんて、釣り用の靴だ。



前を歩いてたリーガンが、
「ちょっと待って。」
と、1人で先の方を調べに行った。
そして帰ってきて、私達に言う。

「これから先、湿地帯が続き、もっと険しい道になるみたいだ。」




もっと険しい?
すでに十分険しいぞ。



「メルモは、ここから戻ってもいいよ。でも、僕は諦めない。絶対にあのB24の所まで歩いてこの目であの飛行機を見るから。」
リーガンの決心は固い。


私はちょっと嬉しかった。
諦めないと言った時のあの強い父親の姿を、息子達は将来、辛い壁にぶち当たった時に思い出してくれるかな。


リーガンが向かう所、家族はどこへでもついていかなくちゃ!
諦める訳にはいかない。







って、言うかね。

リーガンしか道知らないんだから。



こんな所で1人で戻れと言われても、戻れませんから!
a0088116_6355130.jpg

それから、ガンガン歩く。



一つ心配な事は、持ってきた飲み水が少ない事。
こんなに遠くまで来ると思っていなかったので、十分な水を持ってきていない。
子供達のために、自分達が飲む水も我慢していた。



するとリーガンが、スワンプ地帯で地面から湧き出ている水を発見。
「これは自然の草がフィルターになってるから、そのままで飲めるはずだ。」
と、水筒に水を汲んだ。



本当に?
フィルター通さなくて飲んでも、大丈夫なの??


それでものどの渇きには代えられず、恐る恐る口をつけてみた。
「ええい、これでお腹痛くなっても、いいや!」


ごく、ごく、ごく。



美味しい!
冷たくて、すごーく美味しい。
こんな美味しい水は、飲んだ事がない。




なまら、美味い!!


水パワーで、元気が沸いてきた!
またまた歩き始める一行。
a0088116_6371157.jpg

岩の道を登る子供達をヒヤヒヤしながら見守る。


途中でムサシが目に涙をいっぱい溜めながら、
「文句言うんじゃないよ。文句じゃないんだけど。」
と私の所に来た。


「文句じゃないけど、痛いの。足がすごく痛いんだ。」
靴を脱がしてみると、ムサシの足にはマメがいっぱい。

これは、痛いはずだ!

イサオさんが持ってきたテーピングで治療してくれた。
足が治ると、また元気を出し、歩くムサシ。

「チョコレート食べる?」
イサオさんが聞くと、

「要らない。飛行機まで着いてから、食べた方が美味しいから。」


強くなっていくムサシの姿を見て、なんか、胸がいっぱいになる。
子供は、こうやって成長していく物なのかな。




歩いて、歩いて、歩いて。
そしてなんと、歩き始めて5時間。
ついに飛行機まで到達!

そこには何とも、すごい物が落ちていた。
a0088116_640541.jpg

a0088116_6411337.jpg

a0088116_6415536.jpg

a0088116_6423218.jpg

これが、60年も前に落ちた飛行機。
そのまま、ここに残っているなんて。


言葉に出来ない衝撃だ。
その場で1時間程、写真を撮った。
a0088116_6425911.jpg

しばらくボーっとその場に座り、帰り道の事を考える。

また来た道を、戻るのか・・・。
ちょっと、気が遠くなりそうだ。

日が暗くならないのは、とても助かる。
こんな所で周りが暗くなったら、怖いし帰れない。

白夜でよかった!



その時ムサシが、
「いい考えがある!」
と目を輝かした。

「ねー、イサオ。この飛行機修理してよ。


「へ?」




「飛んで帰れば、いいんだよ!」






ムサシくん、それは何でも無理でしょう。

いくらイサオさんでも、出来ないって。


結局帰りは3時間半かかった。
夜中の11時40分に、やっとキャンプ地まで戻れたのであった。
a0088116_6541093.jpg

大変だと言うけど5歳や8歳の子供でも行けたんだから、実際はたいした事ないんじゃないかと思う人もいるだろう。


でもね、本当に大人の私でも、すごくキツいハイキングだった。
普通の子供では無理だ。
きっと、このB24までハイキングした最年少記録じゃないか。
我が子ながら、すごい子達だと思う。


スーパー5歳児とスーパー8歳児だよ。


山を10年やっているイサオさんでも、
「こんな事をいつもやってるのか。すごい家族だ。」
と驚愕したぐらい。





かなり疲れた。



ずいぶん、やられたよ。
まだ川にも出ていないというのに。




冒険は、まだ、始まったばかり。
[PR]
by shs_merumo | 2007-07-17 07:10 | アラスカ 川下り


<< チャーリー・ユーコン川下り そ... チャーリー・ユーコン川下り そ... >>